コロナ禍 ✕ 有機農業
現在、作成中の小冊子
「コロナ禍」とは何だったのか
〜有機農業の視点から振り返る〜
コロナ禍の最中に書かれた小林農場の農場通信より抜粋されています。
農家の立場からコロナ禍について語っています。
自然について、健康について、命について、今まで有機農業から何を学んできたのか。コロナ禍の日々では、それが試されました。
コロナ禍を振り返ることは、有機農業の理念を振り返ることにもなります。
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小冊子の3ページ目
「医」、「食」よりも前に「菌」があり 令和3年12月29日
令和3年の歳晩にこの通信を書いています。皆さま、令和4年もよろしくお願いいたします。
皆さんにお薦めしたい書籍があります。「新型コロナワクチンよりも大切なこと」(講談社ビーシー出版)。著者の本間真二郎さんは、現在は栃木県那須烏山市にある診療所の所長として地域医療に従事していて、ウイルス学やワクチン学に携わってきた経歴もあります。
新型コロナワクチンは遺伝子操作技術によって早急に開発された「遺伝子ワクチン」であり、従来のワクチンとは全く違う種類のワクチンです。著者はこのワクチンについて「接種後に時間が経ってから表れてくる副作用に関しては全くデータがなく、何が起こっても不思議ではない」と語り、具体的に懸念される副作用について本書で説明しています。
著者は、「本当は新型コロナワクチンを接種したくないのだけれども、職場などから接種するべきだと強く言われて、困っている。」という相談を受けることが多いようで、「本書の内容を順序だてて説明すれば、周りの人達からワクチン接種を強要されることはなくなると思う。」と語っています。著者は「新型コロナワクチンを接種するべきではない。」と主張しているのではなく、「ワクチンを接種する選択も、しない選択も、どちらも尊重されるべきであり、各個人が自由に選択できるようにすることが大切」と主張しています。選択するための判断材料としてウイルスやワクチンについての基礎知識も本書に書いています。
著者は、人が健康を保つには医療よりも前に食生活が大切であり、食材となる作物が大切であり、作物の生育に菌の存在が欠かせないと語ります。著者も医療に従事しながら自分の家族が食べる食材を家庭菜園で自給しているようですが、様々な菌が生息しやすいような土作りを心掛けているようです。作物と同じように、人間の体外にも体内にも様々な菌やウイルスが生息していて、それらが体の健康を維持させてくれています。腸内の細菌が食べ物を消化してくれたり、肌に付いている常在菌が雑菌の侵入を防いでくれたりしています。
一部の菌やウイルスが人体に病気を引き起こす場合もあるのですが、近年、それらの病原体を排除するために人類は消毒を頻繁に行うようになりました。消毒は病原体だけではなく、人の健康に必要な菌やウイルスも殺します。著者は頻繁な殺菌により、アレルギー、がん、生活習慣病、発達障害、うつ症などの「現代病」が増加していると分析しています。
人の目には見えない菌やウイルスはあちらこちらに生息していて、普段から私達はそれらに自然に感染しながら暮らし、感染する度に私達の体はそれらとの付き合い方を自然に学び、免疫も身に付けてゆきます。「全ての病気の原因は自然に反した不自然な生活にある。」と著者は強調していますが、頻繁な殺菌、ワクチンの接種、外出の自粛、長時間のマスク着用など、菌やウイルスと共生することを拒絶してゆくこれらの行為は不自然であり、私達の体は菌やウイルスと上手に付き合えなくなって、却って病弱になるかもしれません。
畑の土には特に多様な菌やウイルスが生息していて、私は土に触れてこれらに感染することによってこれらと共生してゆける体質を身に付けています。非常にウイルス感染を恐れ、非常にワクチンに依存してゆく私達の社会に一石を投じている本をお薦めしました。
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小冊子の4ページ目
無農薬栽培の筋 令和4年2月3日
残寒の候、皆さま、いかがおすごしでしょうか。
栃木県内で無農薬栽培を行っている私の知り合いの農家の団体は、無農薬栽培の実践や考え方を多くの人達に普及してゆくために毎年、上映会などを開催しています。今年も2月上旬に開催される予定でしたが、栃木県で新型コロナウイルス感染拡大に伴う「まん延防止等重点措置」が発令されたことを受けて、開催予定日の1週間ほど前に開催中止が発表されました。農家団体の皆さんにとっては現状を熟考した上での苦渋の決断だったでしょう。
上映会で上映される予定だったドキュメンタリー映画には「菌ちゃん先生」という愛称で親しまれている長崎県の農家が出演していて、私は以前からインターネット上で配信されている菌ちゃん先生の講義を楽しく拝聴していました。サービス精神に溢れるお人柄でそのお話がとてもおもしろいです。上映会も楽しみにしていましたが、中止は残念でした。
無農薬栽培を行っている菌ちゃん先生は、畑に存在している目には見えない菌の働きのおかげで作物が健全に育つと語ります。菌のことを「菌ちゃん」と呼び、畑の土に手を当てて「菌ちゃん、ありがとうね。がんばってね。」と声をかけると本当に菌が良く働いてくれるようになると言います。菌ちゃん先生のお話は終始、菌への感謝の念に貫かれています。
菌ちゃん先生が以前に農業改良普及員として作物栽培を研究していた頃、病原菌を殺菌するためにキュウリに農薬を散布しながら育てていると、次第にキュウリは病気にかかって全滅しやすくなってしまったようです。いっぽうで、すぐ近くに農薬を散布せずに栽培されていたキュウリは病気にもかからずに元気に育っていました。「農薬で殺菌すると病原菌だけではなくキュウリの生育に必要な菌まで死滅させてしまい、キュウリは病弱になってしまう」と菌ちゃん先生は消毒を頻繁に行う現代の農業に疑問を抱き始めました。
コロナ禍以後、あらゆる場所で消毒液を頻繁に散布して徹底的に殺菌してゆく社会の風潮に対して、菌ちゃん先生は「農業で起こった間違いを繰り返してしている。人間も菌やウイルスの働きによって健康を維持しているのに、自らそれらとの絆を断ち切っている。過度な感染予防によって人間の免疫力も鍛えられなくなって病弱になる」と警告しています。
菌ちゃん先生が「みんなに観てほしい」と推している映画は「風の谷のナウシカ」。舞台は「腐海(ふかい)」と呼ばれている森で、巨大な菌類が腐海を支配していて、おぞましい姿をした巨大な蟲(むし)たちも生息し、腐海は猛毒に満たされています。ある者達は腐海を恐れて「腐海を焼き払おう」と言いますが、主人公の少女・ナウシカは腐海の深部に足を踏み入れて、人間がかつて大地に排出してしまった毒を腐海や蟲が吸収して浄化してくれようとしている事実に気づき、蟲と心を通わせます。菌ちゃん先生は、普段は人から忌み嫌われている害虫・菌・ウイルスなどが自然界を浄化して循環させてくれていると説きます。
害虫・菌・ウイルスとも共存してゆこうとするのが無農薬栽培の筋です。無農薬栽培に関わってきた者達はコロナ禍の中でも筋を通して、「新型コロナウイルスを過度に恐れることを控えて、今までインフルエンザウイルスなどと共存してきたように新型コロナウイルスとも共存してゆこう」と周りに呼び掛けてほしいです。